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東京高等裁判所 昭和57年(ネ)2488号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

一控訴人は昭和四九年六月一〇日訴外会社から原判決別紙物件目録記載の建物(以下、本件建物という。)を期間五年間の約で賃借したが、その際訴外会社に対し、一、三七〇万円を保証金名義で、本件建物の賃貸借が期間満了により終了したときには、その九〇パーセント相当額の返還を受けることの約定のもとに交付したこと、被控訴人が昭和五三年一〇月一一日訴外会社から本件建物を買受け、その賃借人たる地位を引き継いだことは当事者間に争いがない。

控訴人は、前記のように被控訴人が昭和五三年一〇月一一日訴外会社から本件建物を買受け、その賃貸人の地位を引継いだから、被控訴人は当然に本件保証金返還債務も承継したと主張するので、以下この点について審案する。

まず右保証金の性質について検討するに、<証拠>を総合すると、控訴人は訴外会社との間で、右賃貸借契約締結に際し、(イ)賃料は月二〇万円、(ロ)訴外会社は控訴人において右賃料を三か月以上滞納したときなど所定の事由があるときは催告を要しないで右契約を解除することができる、(ハ)控訴人は右契約を解約することができる、(ニ)控訴人は訴外会社に対し右契約終了後明渡済に至るまで右賃料額の二倍相当の損害金を支払う、(ホ)控訴人は右契約上の債務の履行を担保するために右保証金を交付する、(ヘ)訴外会社は右契約が終了したときは控訴人に対し右明渡後三か月以内に右保証金から償却費としてその一〇パーセント相当額を控除した残金を返還する旨を約したが、そのほかには敷金名義の定めはなく、その授受もなかつたこと、訴外会社は右賃貸借契約成立のころ訴外大沢宏行所有の群馬県太田市東本町二二番一宅地226.14平方メートル上に鉄筋コンクリート造地下一階、地上一〇階、塔屋二階(以下、本件ビルディングという。)を建築所有したが、本件建物は本件ビルディング内の一部に存するものであり、訴外会社は本件保証金を本件ビルディングの建築資金の一部に充てたことが認められる。

右事実によれば、右保証金の交付は控訴人の賃料債務その他右賃貸借上の債務の担保の目的でされたものではあるが、その金額が右賃料額に比し著しく多額であり、本件ビルディングの建築資金の一部に充てられたことからすると、その主たる目的はむしろ右賃貸借契約締結に際し消費貸借の目的としてされたものであり、右保証金はいわゆる建設協力金と解するのが相当である。そうだとすれば、右保証金返還債務は本件建物の所有権移転に伴つて当然に新所有権者が右保証金の返還債務を承継すると解することはできないものというべきである。他に右保証金返還債務が当然に訴外会社から被控訴人に移転すべきものであることを認めるに足りる特段の事由の主張立証はない。

してみれば、被控訴人は昭和五三年一〇月一一日訴外会社から本件建物を買受け、その賃貸人たる地位を承継したことは前示のとおりであるけれども、被控訴人がこれにより当然に右保証金返還債務を承継負担したものということはできない。

(岡垣學 磯部喬 大塚一郎)

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